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第41回船乗りたちの道しるべ

部崎? 神子元? 来島?
陸上に住む一般の人々にはいまひとつ馴染みのない、読み方すらよく分からない地名ですが、日本の沿岸には海で生きている船乗りたちにとって大昔から自分の現在位置を確認したり、進むべき方向の目印にしたり、時には悪天候による遭難から命を守るために避難したりする大切な地点が数多くあります。
このシリーズではこのように船乗りたちにとって大切な道しるべとなる場所をご紹介していきます。

Vol.11 鳴門海峡(なるとかいきょう

今回は鳴門海峡をご紹介いたします。
「鳴る門」と書いて「なると」と読みます。
淡路島と徳島県鳴門市の大毛島(おおげじま)、島田島(しまだじま)の間にある播磨灘と紀伊水道を結ぶ最狭部わずか約1.4キロメートルの海峡です。

地名の由来は強い潮がごうごうと大きな音を立てて流れる事から「鳴る瀬戸(狭い海域のこと)」もしくは「鳴る海門(瀬戸・海峡のこと)」と呼ばれるようになったとも言われています。

このように潮の流れの速い鳴門海峡ですが、その潮流はイタリア半島とシシリー島間の「メッシーナ海峡」、北アメリカ西岸とバンクーバー島東岸間の「セイモア海峡」と並ぶ世界三大潮流のひとつに数えられているほどです。

播磨灘と紀伊水道の干満の差から発生する激しい潮流は巨大なうず潮を発生させ、5階建てのビルに匹敵する直径15メートルに達する巨大なものまであり、うず潮の大きさでは世界三大潮流の中でも最大で、鳴門のうず潮が世界一と言われています。
そのため、淡路島側と鳴門市側双方から出航している観潮船でうず潮を真近に見ることができる「うず潮観光」は根強い人気を誇り、毎年数多くの観光客が、鳴門のうず潮を観るためにこの地を訪れています。

京浜地区や中京地区と瀬戸内地区を往来する船舶は明石海峡か鳴門海峡を通 航する必要がありますが、明石海峡経由の場合は遠回りになるため航海時間が4~5時間ほど余計に必要となります。
そのため、一般的には鳴門海峡を通航する船舶が多いのですが、上述のように鳴門海峡の潮流は日本一速く、最大で時速11ノットにも達する場合もあります。

当社のケミカルタンカーの通常の巡航速度は時速11ノット程度ですので進行方向から向かってくる逆潮の場合はエンジン出力を上げて通過しなくてはなりません。

しかし最大速度の11ノットの逆潮の場合はどんなにエンジン出力を上げても前に進むことが出来ません。そのような場合には、必然的に付近の海域で待機して、潮の流れが弱まって航行可能になるまで「潮待ち」をせざるを得なくなります。

これでは、無駄な待ち時間が発生して非常に非効率な運航となってしまいます。
しかし、鳴門海峡の潮は不規則に流れている訳ではありません。
実は、鳴門の潮は毎日少しづつ5~7時間おきに時間をずらしながら、下記のように規則的な変化を繰り返しているのです。
南から北へ流れる北流⇒北流最強⇒北流が弱まり静止⇒転流⇒北から南へ流れる南流⇒南流最強⇒南流が弱まり静止⇒転流⇒再び南から北へ流れる北流・・・・

つまり、あらかじめ進行方向からの強い逆潮が流れていない時間に鳴門海峡を通過するように運航計画を立てておけば無駄な待機時間を無くすことが可能になるのです。
(注)北流とは北に潮が流れていく状態。北から吹いてくる風を北風と呼ぶ風の呼び方とは正反対となる。

例えば、平成27年の10月23日に京浜から瀬戸内に向けて出港する場合、積荷役が終了して13時頃に出港すると、鳴門海峡に到達するのは翌日10月24日の22時頃になります。その時間は北から南に流れる南流がその日最強の8.2ノットに達しているので、時速11ノットの程度の能力の内航ケミカルタンカーではどんなにエンジン出力を上げても人間が歩くのと同じくらいの速度しか出すことが出来ません。
何より、針路を保つことが出来なくなり、強い潮流に船が流されてしまって事故を引き起こす危険性もあります。
そのため、そのような場合には荷主様にお願いして、出荷地での荷役の開始時間を2時間ほど早めていただいて11時頃に出航できるように調整します。そうすれば鳴門海峡到着時間が20時頃になるので、北から南に流れる逆潮ではあるものの、潮の流れは時速2~3ノットと弱くなっているため、船は問題なく鳴門海峡を通過する事が出来るのです。

日々の潮の流れの変化の時間は海上保安庁発行の潮汐表で確認できますので、配船担当者は、これを確認しながら荷主様や船長と荷役時間や積み揚げの日程の調整をして運航計画を立案しています。

世界一の迫力のうず潮で観光客にとって人気の観光名所の鳴門海峡ですが、船乗りたちや配船担当者にとっては、たいへん厄介な海の難所の一つなのです。

写真

(画像提供 徳島県観光協会)

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