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第60回船乗りたちの道しるべ

部崎? 神子元? 来島?
陸上に住む一般の人々にはいまひとつ馴染みのない、読み方すらよく分からない地名ですが、日本の沿岸には海で生きている船乗りたちにとって大昔から自分の現在位置を確認したり、進むべき方向の目印にしたり、時には悪天候による遭難から命を守るために避難したりする大切な地点が数多くあります。
このシリーズではこのように船乗りたちにとって大切な道しるべとなる場所をご紹介していきます。

Vol.18 備讃瀬戸(びさんせと)

今回は備讃瀬戸(びさんせと)をご紹介いたします。
瀬戸とは本来、陸地と陸地に挟まれた狭い海域のことを示しますが、吉備の国の「備」、讃岐の国の「讃」のそれぞれ一文字を冠した備讃瀬戸は文字通り瀬戸内海の中でも岡山県と香川県に挟まれた、東は播磨灘(はりまなだ)、西は燧灘(ひうちなだ)の間に位置する東西約60キロメートル、南北約10キロメートルの非常に狭い海域のことを指します。

※地図上は備讃瀬戸海上交通センターの位置を表示
その北方で東西に伸びる海域が備讃瀬戸

瀬戸内海で本州と四国の距離が最も近い岡山県玉野市日比と香川県高松市の大崎ノ鼻間の海域はこの備讃瀬戸の中央付近にあり、その幅は僅か6.7キロメートルしかありません。
更に、この狭い海域に大小様々な島々が点在しているため、船舶の航行できる範囲が非常に制限されています。
しかも、ここは関西と九州を結ぶ東西に航行する船舶と、本州と四国を結ぶ南北に航行する船舶、そして水島をはじめとする石油コンビナート群に出入りする船舶、更には神戸や大阪等に向かう外国船舶などが、まさに縦横に混在しながら航行している国内有数の船舶輻輳海域です。
また、備讃瀬戸はこのように海上船舶交通量が非常に多いうえに、「こませ網漁」や「さわら流し網漁」などの漁船が多数操業している海上事故の多発海域でもあります。

そのため、備讃瀬戸では特別な航路と通航ルールが定められています。
まず東西方向の航路は瀬戸大橋を挟んで東側が備讃瀬戸東航路(中央から北半分が西行き、南半分が東行き)、西側が備讃瀬戸北航路(西行き)と備讃瀬戸南航路(東行き)が定められています。
南北方向の航路は、岡山県の宇野港と香川県の高松港の間の宇高東航路(北行き)、宇高西航路(南行き)と水島港と坂出港の間の水島航路(出来るだけ東寄りが北行き、同様に出来るだけ西寄りが南行き)の航路が定められています。
※海上では基本的に右側通行

備讃瀬戸海上交通センターと備讃瀬戸略図

備讃瀬戸海上交通センターと備讃瀬戸略図
画像提供 海上保安庁

備讃瀬戸を通航する船舶は当然これらの航法を守らなくてはなりません。
また合流や追い越し、東西と南北の航路の相互変針時などの航行ルールが厳密に定められており、このルールを守ることにより狭い海域に多数の船舶が集中する備讃瀬戸での船舶の運航の秩序が保たれています。

また、備讃瀬戸の船舶運航の安全を守るため、水島航路を望む香川県宇多津町の青ノ山の中腹に備讃瀬戸海上交通センター(備讃マーチス)が設置されており、船舶に対して安全航行に必要な各種情報の提供や船舶の管制業務等を行っています。

世界でも類を見ない多島海美を誇る備讃瀬戸を中心とした一帯は、瀬戸内海国立公園として1934年に日本で初めて雲仙国立公園、霧島国立公園と共に国立公園に指定されました。
※現在では瀬戸内海国立公園の範囲は北九州市から和歌山市まで瀬戸内海全域に拡張している。
そこでは「二十四の瞳」の舞台となった小豆島や「桃太郎鬼が島伝説」の残る女木島(めぎじま)をはじめとする大小さまざまな島々や、青い海に一直線に伸びる真っ白な瀬戸大橋の美しい風景などが多くの観光客を魅了しています。
しかし、同時にその海域ではそんな美しい風景を楽しむ余裕もなく、人命や大切な貨物の確実な輸送のために、安全運航を守り続ける数多くの船乗りたちが、今日も昼夜を問わず全神経を尖らせて操船やワッチ(見張り)などの業務に集中しているのです。

備讃瀬戸水島航路の東側に架かる瀬戸大橋

備讃瀬戸水島航路の東側に架かる瀬戸大橋
画像提供 (公社)香川県観光協会

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