明和徒然日記
第12回 若いですね
以前から、「若いですね。」と言われる事が多かった。
実際、通勤電車で見かける多くの同年代の方々と比べてもあまりお腹は出ていないし、多少の増減はあったものの体重は20代の頃とほぼ同じ。
駅ではエスカレーターを使わず階段で昇り降り、タバコは一切吸わないし、暴飲暴食もしない・・・、たまにする(スミマセン)。
もともと若い頃から童顔に見られる方で、大学1年生の時に塾講師のアルバイトの採用面接に行った際に採用担当者から「君は顔に威厳が無いなぁ・・・。ウチの生徒たちになめられそうだから不採用!」と言われて落とされた事がある。
翌日、大学でその話をすると級友たち、特に年上の浪人組の連中からは「君は顔に威厳が無いなぁ。威厳が。」とさんざんからかわれた。
森鴎外や夏目漱石の時代の帝大生じゃあるまいし、19歳になったばかりの大学1年生の顔に威厳を求める塾の担当者もどうかと思うが、私の事をさんざん揶揄した当時の“自称”顔に威厳のある浪人組の同級生諸兄、今ではものの見事に正真正銘のオジサンになっている。
あれから時は流れ、私も既に還暦を超えてしまっている。
誰でも一年にひとつ歳をとる。
これは当然の事なので特に感慨はない。
しかし、肉体や脳の変化は気づかないうちに確実に訪れている。
髪に白いものが増えた。
朝やたら早く目が覚める。
物や人の名前がすぐには思い出せず「アレ」とか「ソレ」しか出てこない。
運動後の筋肉痛が翌日ではなく翌々日に出ることがある。
数え上げればキリがない。
そしてふと思った。
若い頃は自分の事を若いなどと思ったことは無いし、ましてや人から「若いですね」と言われたことも無かった。
当たり前だ、本当に若い人に向かって「若いですね。」などと言う人がいるわけがない。
「若いですね。」と言われる事自体がもう若くない証拠なのである。
今年も忘年会真っ盛りの12月を迎えた。
2次会の店で綺麗なホステスさんに「〇〇さんって若いですネェ♡」なんて言われて有頂天になっている、そこのご同輩。
喜んでる場合じゃないですよ。
筆者 佐藤兼好
忘年会シーズンの銀座