明和徒然日記
第8回 負けるな、蝉!
明和海運のオフィスの近くには東京タワーや芝公園、増上寺など観光スポットが多く、雨の日以外は、私は殆ど毎日昼休みに付近を散歩している。
先日、その散歩中に珍しい光景を見た。
芝公園でスズメと蝉が空中戦をしていたのだ。
一般的にスズメは雑食で小さな虫なども食べる事は知っていたが蝉まで狙うとはちょっと驚きである。
(必ずしも捕食しようとしていたとは限らないがスズメと蝉が縄張り争いをするとは考えづらいし、ただ単にじゃれあっているとも思えない。どなたか詳しい人がいたら教えてください。)
少しのあいだ見ていたが体格的に劣る蝉は防戦一方であるものの、なかなか善戦しているようで、空中でスズメと衝突しては離れ、接触しては離れを繰り返していて、すぐには決着がつかない。
「痩せ蛙 負けるな 一茶これにあり。」ではないが、心情的にはどうしても小さい方に味方したくなるものだ。
しかしスズメの方も生きるために必死なのだろうし、自然界の行為に人間の勝手なヒューマニズムで介入してはいけないと思って手は出さないでいた。
出来れば蝉くんに頑張ってなんとか逃げおおせて欲しいと思いつつも昼休みが終わりそうになり、急いで職場に戻ったため結果がどうなったかは分からない。
話は変わるが明和海運は比較的小規模な海運会社である。
各種のプラスティックや塗料、繊維などの原料となる液体ケミカル製品や液化ガスを海上輸送する内航タンカーを専門に運航している会社なので、一般の消費者の方々の目に触れる事はないし、会社の規模も商船三井や日本郵船のような誰でも一度は耳にしたことのある巨大海運会社と比べると象とアリのように違う。
また同じタンカー会社の中でも外国航路やガソリン、灯油、軽油等の石油製品輸送も手掛けているような他の会社と比べるとスズメに対する蝉のような規模だ。
しかし、当社は70年近い歴史を持ち、内航ケミカル輸送の部門においては他の大手タンカー会社と同等以上のケミカルタンカー船隻数、そして輸送量を誇っている。
蝉には蝉の戦い方があるように明和海運には明和海運の戦い方がある。
我が国の内航ケミカル輸送を担う一翼として石油化学メーカーや商社などのお客様のご期待に沿えるよう、安全第一を基本として船陸一丸となって運航を続けてきた。
だから今更ではあるが、やっぱりエールを送ろう。
筆者 佐藤兼好
写真:蝉とスズメが空中戦をしていた茂み(東京都港区芝公園)