日本には、9ヵ所15の石油化学コンビナートがあり、我が国は石油のほとんどを海外から輸入しているため、石油を運ぶタンカーが利用しやすい太平洋岸や瀬戸内海の埋め立て地に多くが所在しています。
石油化学製品は、石油化学コンビナート内でいろいろな工場がパイプラインでむすばれて生産されています。(下図参照)
これから、石油化学コンビナートで原油から石油化学製品ができるまでの流れを見てみましょう。
油田から運ばれてきた原油は貯蔵所を通って石油精製工場に運ばれます。
貯蔵タンクから石油精製工場に運ばれたこげ茶でどろどろした原油は、蒸留塔(じょうりゅうとう)でいろいろな石油成分に分けられます。
この中の石油製品のひとつであるナフサが、石油化学製品の原料になります。(日本では、石油化学製品のほとんどがナフサからつくられています。)
それぞれの石油製品は、沸騰(ふっとう)しはじめる温度(この温度を沸点(ふってん)といいます)が違う性質があります。
これは逆に、それぞれの石油製品は気体(石油蒸気)から液体(石油製品)に変化しはじめる温度も違うということです。この性質を利用して、原油を加熱して生まれた気体(石油蒸気)からそれぞれの石油製品に分けていくことができます。このことを蒸留(じょうりゅう)といいます。
石油精製工場でわけられたナフサはナフサ分解工場に運ばれてきます。
石油化学製品の原料となるのは、石油精製工場で分けられた、石油製品のひとつであるナフサが中心となります。ナフサはガソリンに似た透明(とうめい)な液体です。
ナフサは、ナフサ分解工場で化学反応によって、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどという重要な製品につくりかえられます。
工場の中では、コンピュータで温度や反応の状況が管理されています。
とても高い温度になっているナフサ分解炉(ろ)のなかの管をナフサが通ると、ナフサははげしい化学反応(熱分解反応)をおこします。
※石油化学基礎製品は、おもにナフサから作られますが、原油に含まれるいろいろな成分を有効に使うため、ナフサ以外の物質から作られることもあります。
ナフサ分解工場でつくられた石油化学基礎製品は石油化学誘導品工場へ運ばれます。
ナフサ分解工場でできた石油化学基礎(きそ)製品は石油化学誘導品工場(中間製品工場)でまた、別の物質につくりかえらえられます。石油化学誘導品工場は、原料である石油化学基礎製品のちがいによって、また、つくる誘導品のちがいによって、それぞれ別の工場になっています。
だから、石油化学コンビナートの中には、さまざまな誘導品工場があるのです。
石油化学基礎製品のエチレンを例にあげて見てみると、 エチレンという粒(つぶ)をつないでいく工場と、このエチレンにほかの分子を化学反応させて別のものをつくっていく工場に分かれます。エチレンの粒をつないでいく工場では、 重合という化学反応でポリエチレンというものに変化させます。このときの重合とはエチレンという分子をつないでいく反応のことです。
これをもう少しくわしく見ていくとこんなことがおこっているのです。
これがポリエチレンというもので、最初のエチレンとはまったくちがった性質をもっている、身近にあるプラスチックのひとつです。
そうです。「ポリエチレンの袋(ふくろ)」などという言葉は耳にしたことがありますね。
この石油化学誘導品工場(中間製品工場)で、袋や容器などにつくられる前の材料、ポリエチレンという物質になるのです。ポリエチレンは丸い粒の形でつくられるので、トラックなどで石油化学コンビナートの外に運びやすくなります。
このように、石油化学誘導品工場(中間製品工場)では、ナフサを分解して得たエチレンなど「石油化学基礎製品」に、重合させたりほかの分子をくっつけたりして、身近にあるものをかたちづくる「材料」をつくっています。
石油化学コンビナートでつくられた石油化学誘導品は関連産業工場に運ばれます。
ここからは石油化学コンビナートの外で行われることになります。
トラックなどで石油化学コンビナートから運び出された石油化学誘導品(ゆうどうひん)(中間製品)は、関連産業工場で加工されて、下の写真のような身の回りにある製品になります。
こんなにたくさんのものがつくられているのです。
石油化学工業協会のホームページから引用
▶ 石油化学工業協会について