次席一等航海士
鹿児島県出身
現在の職位は次席一等航海士で、明和海運株式会社が運航するケミカルタンカー「明和丸(めいわまる)」に乗船しています。
航海士にとって、最も重要な業務は航海当直で、当社では基本的に1人で行います(シングルワッチ)。自らが針路を決定し、レーダーと双眼鏡を使って他の船舶や漁船の位置確認や見張りを行いながら、あらゆる危険から船を守り、目的地まで操船することを任されます。
目的地に到着すると乗組員全員で荷役作業(製品の揚げ積み)を行います。また、その他の時間は、船体や機器の整備作業や荷役及び出入港に必要な書類作成をしたり、出入港時には船の艏(おもて)で離着桟作業、航海中には搭載している製品の管理をするなど、航海士としての業務は多岐に渡ります。
航海当直は基本的に1人で担当(シングルワッチ)し、船長、一等航海士、及び二等航海士が4時間毎に交代で行います。(出入港及び離着桟時は船長が担当)
船橋に1人で立ち、周囲の状況を判断しながら船を安全に操船することになりますが、そこでは絶えず緊張感に包まれています。特に、台風などの荒天遭遇、多くの船舶が密集する海域(輻輳海域)、狭水道を航行するときなどは、緊張する場面も多く、あらゆる事態を想定する危機管理能力が問われ、一時たりとも気が抜けません。
また、私たちは石油化学製品という産業基礎物資を輸送しており、我が国の国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラとして極めて重要な役割を担っています。こうした社会的使命を背負うと同時に、乗組員の命と船という会社の資産を預かる重要な任務であることを肝に銘じて、安全を第一に航海できるよう業務に取り組んでいます。そして、この重責こそが、日々の仕事のやりがいや手応えになっています。
現在の職位は次席一等航海士ですが、当船では一等航海士の仕事を代行しており、次のステップに向けた経験を積ませていただいています。私のような次席一等航海士にも、シングルワッチをさせたり、荷役責任者として、自分で考え判断する場を与えてくれるので、恵まれた環境の中で業務を行うことができ、とてもやりがいを感じています。
実際、補佐をするという立場からチーフオフィサーとして作業するとなると効率的な人員配置や安全面を重視した作業工程など、考えることが山ほどあります。自ら判断して行動しなければならず、1人ひとりの命を預かっているという自負と安全に対する責任の大きさを実感します。
こうした経験を積んでいくことで、見ている範囲がどんどん広く細かくなっていきますし、確実に自分で考えるようになり、一つひとつの仕事に対する考え方が変わってきました。
船の上では、学ぶ姿勢さえあれば、知識や経験を現場で教わりながら自分のものにすることができます。こうした環境の中で、海技者として、そして人間としても、自分を高めて成長していきたいと考えています。
船長や一等航海士の先輩達から学んでいるのは、常に人が業務を行いやすいように環境を整えて仕事をする姿勢です。荷役作業をはじめ、人をまとめる上で気遣いがいかに大切であるかを教えられています。
私も、先輩達がそうしてくれたように、人をよく観察し、長所を引き出せるような先輩になりたいと思っています。当面の目標は、乗組員たちと良い人間関係を築き、なんでも話せる心強い一等航海士になることですが、その先に目指すのは、10~15年後に30代で船長になることです。
船は知れば知るほど奥が深く、もっと多くのことを学ばなければならないと痛感する毎日です。これからも、一つひとつの業務に対して真摯に向き合い、コツコツと地道に習得し、さらにもう一つ自分なりに何かを加えていくことで、基幹的輸送インフラを支える一人のプロフェッショナルとして「自分に何ができるのか?」という問いを追求していきます。
下船して実家に帰ると、仲間と釣りに行くことが多いです。実家は鹿児島県の甑島(こしきじま)にあるのですが、その付近で「地磯釣り」をします。「地磯釣り」とは、瀬渡し(船)ではなく、歩いて行ける磯で釣りをすることで、冬場はグレ(メジナ)がよく釣れます。もちろん、釣った魚は自分で捌いて食べます。最高のご馳走です!
また、下船すると20日間程度のまとまった休みが取れるので、友人とよく旅行に行ったりしています。乗船中、海上でも常時インターネットが使えるので、友人と連絡を取りながら、次の休暇は何をしようか計画するのは、楽しい時間のひとつです。最近では、会社が契約している福利厚生サービス(ベネフィットステーション)をよく利用しています。
自然に囲まれた島で癒され、釣りをしたり、旅行に行ったりして心身共にリフレッシュすることで、次の乗船に向けて英気を養っています。
船は生活の場でもあるので、協調性が求められ、周りに気を遣いながら、お互いに思いやりを持って接することが大事です。また、最初は、慣れない環境の中で、仕事を覚えていかなければならないので、気力と体力を維持するのに苦労するかもしれません。
ただ、こうした生活には徐々に慣れていくので、最初から心配しなくて大丈夫です。大変だなと思うときにこそ、自分に厳しく、何かを得ようとする姿勢が自分を成長させてくれます。
ケミカルタンカーは500GTクラスが主流であり、乗組員が6名程度と人数が少ないので、出入港時や荷役作業では、甲板・機関と関係なく、全員で協力し合って業務を進めていきます。時には、甲板が機関の仕事をフォローしたり、またその逆もあるので、必然的に1人当たりの知識とスキルが高まっていきます。
このように、一人ひとりに高い知識とスキルが求められ、業務範囲も広いので、その経験を重ねることで船員として高いレベルに成長することができます。こうした仕事にやりがいを感じ、船員としての高みを目指したい人であれば、是非、当社の門を叩いてみてください