次席一等機関士
熊本県出身
現在は、明和海運株式会社が運航するケミカルタンカー「明桜丸(めいおうまる)」に乗船しています。
2017年5月に竣工した新造船で、次席一等機関士として、船に搭載されている機器の操作、保守整備・管理を行っています。
船の中には、たくさんの機器があります。船を推進するための主機、船内すべてにかかわる発電機、蒸気をつくるボイラー、潤滑油の性状を一定に保つための潤滑油清浄機など、船を動かすためのすべての機器を管理・整備するのが機関士の仕事です。
また、計画された整備間隔に従い、機器の整備も順次行っています。定期的に造船所で入渠工事を実施しており、その際は機関士が整備中のチェックや各機器の試運転の立ち会いを行うと共に状態の確認をしています。
船の中では、常に聴覚、視覚、嗅覚などの五感を働かせて、周囲の変化に注意することを心掛けています。エンジンの振動に耳を傾け、圧力計などの計器類をモニターし、機関室での点検時は異臭がしないか注意を払う、といったことを常に意識して業務に取り組んでいます。こうして経験を重ねていくと、感覚で船の異変に気付くようになり、未然にトラブルを防ぐこともできます。
もちろん、航海の中では予期しないトラブルが発生することもあります。その時、どのようにしてその状態を乗り切るのか、その積み重ねが経験値となり、スキルとなり、ノウハウとなっていきます。経験がないと対処できないこともあり、こうした時にこそ多くのことを吸収し、全力を尽くして取り組むようにしています。
これからも、常に五感を働かせて、経験を積み重ねていくことで、トラブルを早期に発見し、迅速に対処できる機関士になることが、私の当面の目標です。
ケミカルタンカーの機関士は、当直業務に1日8時間(夜0~4時、昼12~16時)入直することに加えて、お客様の製品を搭降載する時は、離着桟及び荷役作業も行います。1隻当たりの乗組員数は5~6名程度なので、他の船舶と比較して、1人ひとりに業務範囲の広さと業務レベルの高さが求められます。
特に、離着桟作業と荷役作業では、他の乗組員と連携して、安全かつ効率的に作業を進めなければなりません。 他の乗組員の動きを見ながら、次に自分がすべきことを考え実行する、全乗組員が一丸となってチームワークを発揮して、一つひとつの業務を確実に行う必要があります。一人ひとりの責任が重く、簡単な仕事ではありませんが、だからこそやりがいがあると思っています。
機関士としてはもちろんのこと、船員としての高みを目指せる場として、自分自身が成長していけるよう、日々努力を続けています。
現在の職制は次席一等機関士ですが、一等機関士の代行をすることもあり、次のステップに向けて経験を積ませていただいています。機関長や一等機関士から学ぶべきことは多く、これからは知識とスキルに加えて、人をまとめる上では人格が必要とされ、人間としての成長が求められるのだと感じています。私にはまだまだ経験が足りないと痛感する毎日ですが、先輩方から教えていただいたことを貪欲に吸収し、自分の経験値を高めていきたいです。
そして、その先の目標として、30代で、周りから頼りにされる機関長なることを目指したいと思っています。
今、30歳で残り約10年間。この決意に向かって、キャリアを積み重ねていきます。
下船して自宅に帰ると、妻・娘(2歳)・息子(1歳)が出迎えてくれます。今は家族と旅行に行くのが最大の息抜きです。私の帰りを待ち焦がれた娘と息子でパパの取り合いがはじまり、賑やかな休日があっという間に過ぎていきます。私が仕事で家を留守にしている間、子供たちの世話をして、家庭を守ってくれている妻には本当に感謝しています。
乗船中でも、家族とは毎日のように連絡を取り合っています。船内は無線LANが完備されているので、LINEでメッセージのやり取りをしています。また、妻が子供たちを寝かしつけた後、夜には電話でも話をしています。休憩時間に、子供たちの近況報告を聞いたり、次の下船時の旅行計画を立てたりするしている間は、乗船期間中のリフレッシュになっています。
ケミカルタンカーは500GTクラスが主流なので、多くの公共バースに寄港することが可能です。当社は、乗組員のワークライフバランス推進のため、公共バースへの寄港を推奨しています。ですから、通常期であれば10日に1回程度は公共バースに寄港し、買物や食事に行くことができます。乗船期間中であっても、日本国内の色々な港に行くことができ、上陸してリフレッシュできる機会が多いのが、ケミカルタンカーの良いところです。
但し、基本は船内生活ですから、この環境に慣れなくてはいけません。繁忙期は公共バースに寄港できる回数が減ることもあります。また、ケミカルタンカーは、他の船舶と比較して1人ひとりに広い業務範囲と高い業務レベルが求められるので、これをやりがいとして感じることができる人でなければ務まらないことも事実です。ケミカルタンカーの乗組員を経験したら、大抵の船は務まると言われる所以です。
是非、こうしたことを理解した上で、船員として、人間として、成長できる舞台として、それなりの覚悟と夢を持って、私たちの仲間となり内航タンカーの最高峰を目指してください。